江別中央通り銀座

Vol.1

江別中央通り銀座

北海道江別市王子

◎ヒビサビ度=伍銀

◎銀ブラ推奨度=参銀

 駅前の交番でこの通りを尋ねると、そこにいた全警官が頭をひねった。すでに地元でも、この通りの「銀座」の冠は葬り去られているのかもしれない。札幌の隣町、江別の銀座中央通り。閉店ガラガラという、往年のお笑いギャグが頭をかすめるいい感じのシャッター街、と聞いてやって来た。
 JR江別駅から徒歩で十分ほど。住宅街に忽然とその姿を浮かび上がらせるややゴーストタウン化した、わびさびと言うより、ヒビサビ商店街。

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 アーケードは二つに分かれており、それぞれ12、3の店が軒を連ねている。いや、連ねていたらしい。片方は、すでにかなりの店が、営業不能状態。かつてはパチンコ屋だった建物などはいい具合にゾンビ化が進行しており、銀座マニアのハートをくすぐる。果物屋のサインがあるスペースは建物自体が消滅していた。それでも、酒屋、金物屋、美容院などいくつかには人影も見える。

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 さて来たからには、どこかで呑みたいところ。しかし喫茶店らしき店構えが伺えるも、営業している様子はない。仕方がないので、林商店なる酒屋で焼酎のポケット瓶を購入する。
 店の奥さんが「昔は、この道の奥に王子製紙の社宅があって、ものすごい人通りだったんですけどね...」と目を細めた。
 なぜか「そんな名残、もうどこにもねーじゃん〜」と、言い放ちたい衝動が沸き起こる。
自分が銀ブラを好むその感情の奥に、得体の知れないドSな心理が働いていると悟り、妙に驚き、妙に納得する。

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 穴ぼこのアーケードをから覗く空を眺め、空きっ腹にGODOを流し込む。いたたたた、強烈に胃袋に浸みる。また潰瘍がぶりかえしたかも。

 ここまで来るのに約一時間...。軽い虚脱感と胃痛を抱えて、凍てついたベンチに座る。と同時にいつものフレーズが、口をつき白い吐息となって冷気に溶けていく。


「なにしてんだろ、おれ...」


追記 * 江別中央通り銀座は、平成二十一年、整備されてしまい、この絶妙な佇まいはもう拝めません。アーメン。 

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