まさしくハードボイルドなワンダーランド。
「さよならを言うのは、すこしだけ死ぬことだ」
「タフでなければ生きて行けない。
優しくなれなければ生きている資格がない」
「警察とさよならする方法はまだ見つかっていない」などなど、、、、、
決め台詞に、ちょいちょいしびれさせられる本作。
う〜ん、マーロウなまらかっこいすぎるぜー。
どこまでもクールで、どこまでもタフ、
どこまでもロマンチックで、
どこまでも孤独なマーロウ。
そして、けして自分の信念をまげることはない。
それがたとえ、自らの命を脅かすことになろうとも。
村上春樹で新訳が出たときに読んでて、
"再読"ということになるのですが、
(清水氏訳 未読。読んだほうがいいのかな)
もう、本当に再読大事。まじで大事。
20代のときは、ただ「マーロウかっこいい...」という感じだったのが、今回の読了後、心に残っているのはレノックスだったりするんですよね。
レノックスの救いがたい堕落っぷり。
もろくて、弱くて、でも何か人を引きつける魅力があって(それは戦争で背負った闇なのかもしれないけど)。それをわかっていた上であっても、マーロウを引きつけずにはいられないレノックスの魅力。
あー、やっぱり物語の面白さって、
どれだけ魅力的な脇役が揃っているかにかかっているな、と佐藤は感じます。それは、どんな話であっても。(だからこれは微塵も面白くないのだな。ははははは)
そして、訳者 村上春樹氏による
あとがきもいいんですよね。
ドストエフスキーの、死の直前の描写が本人による実体験だということを、江川卓氏の「謎解き」シリーズで知り(ドストエフスキーは実際に銃殺刑を逃れている)、描写の説得力が深まったのと同様に、
あとがきを読んだあと、より物語の深みが増したというか。
レノックスが英国でギムレットの味を覚えたと思われるエピソードも、戦争体験の描写にしても。
チャンドラーの生い立ちと重ね合わせながら読むことができて、興味深かったです。
また再読したときに、
新たな楽しみが発見できるといいなー。
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再読了後、『亜璃西社』和田由美さんと
ご一緒させていただいたときのお仕事が
頭に思い浮かびました。
『じょぶのもと。〈すすきの界隈で働くひと。〉』
この時に書いていただいたエッセイの中に、
マーロウとギムレットが出てきてて。
大人の雰囲気が漂う、すてきな原稿だったな。
こんなふうに、
さらさらっと言葉を紡げたらかっこいいのに。
物書きのひとってすごい。