スマイル書房

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スマイル書房: 2014年10月アーカイブ

『償い』 (幻冬舎文庫)
買い取ってやる度
★★★☆☆

怪しいヤツほど犯人ではない。
これは推理モノ「あるある」
として殿堂入りしている(店主調べ)。

人は怪しくないヤツの中から犯人を予想し、
結末に向かってページをめくるのだ(店主調べ)。

そして物語のラスト。
「はい、残念。犯人は意外なア・イ・ツ。
まだまだ甘いね〜ボ・ウ・ヤ」
という作者の悪意(被害妄想)にふれることで、
「こんちきしょう!てやんでぇ!」と
別の作品を手に取る情熱がわくってもの。

『償い』は元医師でホームレスの主人公が、
ある町の連続殺人事件に関わり、
すったもんだの末に犯人に迫っていく。

焦点は「怪しいヤツ」。
本作の犯人を予想するとき、
大半の読み手は2人に絞ると思う。

ものスゴく作為的に怪しいヤツと、
ものスゴく作為的に怪しくなさすぎて
むしろ怪しいヤツ。

どっちだ!どっちなんだ!?
ええい、ままよ!
「あるある」に素直にのっとって、
ものすごく作為的に怪しいヤツは除外!

結果は...大当たり!勝ったぜ!

冷静に考えてみる。
...いや、誰と戦っていたのだ。
読書はそもそも戦いですらない。
こんな楽しみ方は「なしなし」だ。
推理モノとの向き合い方を、
思い直すきっかけとなった一冊。

ちなみに本作は、
ミステリーに分類されるらしい...。
そもそも推理モノじゃないじゃん!

『競馬場で逢おう』 (宝島社)
買い取ってやる度
★★★★★

あんな人、もう世に出てこないだろうねぇ。

偉業を成し遂げた人が亡くなると
誰彼なく囁く常套句だけれど
このフレーズがドンピシャな人だわね、寺山修司。

詩人であり劇作家であり歌人であり演出家。

昭和の混沌たるカルチャーの先鋒を
鋭利な感覚でグイグイ切り拓いた表現世界の巨星。


...たる彼が記した名著が「競馬場で逢おう」。
昭和45年から死の直前まで報知新聞に連載した競馬予想エッセイだ。


いやはや面白い。
自分が競馬を嗜むからってのもあるんだろうけど
鬼才寺山修司が垣間見せる
斜に構えぶりというか、粋な堕落感みたいなのが
もうたまらんのだよね。
肝心の予想も、
寿司屋の政やミスト◎コのももちゃんとの
くだらねー会話からひねり出したり、
世相に対するシニカルな語呂合わせだったりする上に
あらゆる思考の根幹には、
一番人気などクソくらえの反体制スピリッツが渦巻くもんだから、
全然当たらない。外れまくり。スカに続くスカだ。


だが当の寺山修司はどこ吹く風。
外れようが、一番人気が来ようが、大損しようが知ったこっちゃない。
それまでの連戦敗戦を気にすることもなく
飄々と淡々と今週の馬柱を眺めるのだ。

実に潔い。実に鯔背で、実にカッチョよい。

で、オレもこうなりたい。
オイラもこんな立ち振舞がしたい。
ぜひともなんとか、自分も寺山化したいと、
ワンカップ片手に鉄火場(競馬場)に赴いたりするのだけれど。


結局は... 最終レースの前、
ポケットに突っ込んだ指先で
帰りの地下鉄の小銭をしっかり確認するあたりの

己の小市民さにただ辟易とするだけだったりするのだよね。

ロードオブテラヤマは、遠きけり   ...アーメン。

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