スマイル書房

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スマイル書房: 2014年8月アーカイブ

『砂の王国』 (講談社文庫)
買い取ってやる度
★★★☆☆

窮地に陥った人を宗教が救う。
というと入信のほうを思い浮かべそうだが、
本作の主人公は路上生活というピンチを、
宗教の立ち上げで切り抜ける。
それもインチキ宗教で。

教祖は絶世の美男子。師範代は易者。
いずれも路上生活で出会った少し難アリの人物だ。
主人公は事務局長として2人をコントロールする。

本作は上下巻に分かれていて、
上巻はホームレス生活のやたらとリアルな描写から、
宗教組織の立ち上げまで。
下巻は信者の熱が予想外にふくれあがり、
タイトル通り砂のように崩れていく結末へ向かう。

ご都合主義や伏線を回収できていない部分はあるが、
全体にテンポの良い文章なので一気に読めてしまう。

妄信の怖さとか、人間の欲深さとか、
刹那的な打算の軽薄さとか、嫉妬のおぞましさとか、
人それぞれに受け止め方がありそう。

店主の場合は読み終えた後、こんなことを思った。
当店の「裏オーナー(謎の人物)」から
もしクビを言い渡されたら、
路上生活をして美男子と占い師を見つけて、
インチキ宗教を立ち上げて、
グレーゾーンの仕事に手を染めて、
信者を手品やコールドリーディングでだまして、
自作の壺を高値で売りつけて...。
という面倒なビジネスプランを実行する前に、
某古書店全国チェーンの
「BO●KOFF」に履歴書を送ることだろう、と。

『のぼうの城』 (小学館)
買い取ってやる度
★★★☆☆

今、週に一度の楽しみが大河ドラマ「黒田官兵衛」。
賛否はあるらしいが視聴率は概ね15〜20%をキープしてるとか。

というわけで今回は戦国モノ。
本屋大賞で話題の和田竜の「村上海賊の娘」・・・の前作「のぼうの城」。(「の」ばっかり)

官兵衛に出てくる豊臣秀吉、石田三成も登場する。

舞台は武蔵国・忍城(おしじょう)。
兵500名の小城ながら数万の豊臣軍でも落城できず、
その逸話はさまざまな作品の題材になっている。


内容は主人公を含む少数精鋭が敵の大軍と戦い、
少数軍が奇策や奇襲、あれやこれやで奇跡の逆転を収める・・・
というどこかて聞いたような王道パターン。

登場人物もかなりデフォルメされていて、良くも悪くもマンガっぽい。
マンガっぽいからサクサク読める。
全くアタマは使いません。


このテの作品は史実に沿っていないだとか、時代考証がなってないだとか、
特に時代小説ファンからクレームがつきもの。

実際、Amazonには酷評している人もちらほら。

でも、小説ってエンターテインメントでしょ、と。
史実と違っていようが、楽しませ人が勝ちじゃん、と店番ヒロナカは思うのです。

映画の方はんー、イマイチ。
どっちが先?と言われたら映画→小説でお願いします。

『光る牙』 (講談社 )
買い取ってやる度
★★★★☆

世の中には色んなコンビがいる。

欽ちゃんといえば二郎さん。
のいるといえばこいる。
タカといえばユージ。(トシではない)

そして本作にもコンビが登場する。
青年森林保護官とその上司。
イマドキの若手と無口なベテランだ。
何かに例えようと思ったけど、良い例が見つからない・・・。

舞台は北海道日高山脈。
厳しい自然、巨大羆との死闘。
森林保護官という職業が垣間見える山岳冒険小説だ。

少々、先が読めちゃう展開ながら、勢いがあるので、
ついついページをめくり続けてしまう。
そして、あーやっぱり・・・みたいな。

著者が元自衛官というだけあり
サバイバルなシーンの描写はかなり細かい。

登山、ロープワーク、スキーワックス、うんぬん。
アウトドアマニアにはオススメ。

『Iターン』 (文春文庫)
買い取ってやる度
★★☆☆☆

読後感は地方の食堂の醤油ラーメン。
なんとも普通!な一冊である。

広告代理店東京本社から北九州の支社へ
飛ばされた会社員。
ひょんなことから暴力的な言動や
人を恐怖におとしいれる表情が得意な方々と
関わることになる。

この時点で大方の人は察しがつくだろう。
そう、そう、そうそうそうそう!あなたの想像通り!
一触即発、一発逆転劇が繰り広げられ、
ままま、ハッピーにエンドしようぜ、
ってな具合で予定調和的にゴールにたどりつく。

ツマラナイわけではないけども、
面白いかと言われればそうとも言えず。
地方の食堂の醤油ラーメンみたいに、
おいしくないわけじゃないんだけど、
味は思っていた通り、みたいな。

が、本作は物語の展開やスピード感は早いから、
さっくり読めて、あっさり忘れられる。
それがいい。
重た〜い内容が一切ないから、
もう旅のお供にぴったり。

地方の食堂の醤油ラーメンって、
すぐ出てくるし、わりとあっさりしているし、
町の勝手が分からない時に便利でしょう?
「他にレストランもないし、
間違いはないだろうからラーメンいっちゃう?」
的な感じなのである。

ただ、往々にしてその食堂の場所も味も、
全く思い出せないのだけれど...。

『門』 (新潮文庫)
買い取ってやる度
★★★★☆

小説の結末に関しては好みの分かれる所で、
"はっきりさせたい派"か、
"ボンヤリしてても良い派"かに、
だいたい分かれるかと思います。

店番佐藤は断然後者。
もうボンヤリしてればしてるほど良い、みたいな。
結末はどうでも良くて、
行きつく課程が大切、みたいな。
だって、佐藤は村上春樹好きなんですもの。。。

という訳で、
春樹作品を読み尽くし、取りかかっているのが夏目漱石。
佐藤好みのボンヤリさ加減が、なかなか良い感じなのです。

全作制覇まではまだまだですが、何作か読み、一番ぐっときたのがこの『門』なのです。

これは「三四郎」「それから」に続く、
三部作 最後の作品。

さらっと読むと"道ならぬ恋の末路"みたいな感じなのですが、
「それから」から続けて読むと、なんとなく、
宗助(=代助)はお米(=三千代)じゃなくても、
誰でも良かったのかなー...とか思えてきたり。(お米は本気っぽいけど)

友人の妻を奪うということによって、
自分を証明しようとした「自分探しの旅」的な物語ではないかと、
思えてくる訳なのです。

この時代は家督制度により、
家のことは全て戸主が決めていた訳で、

長男は、行く行くは財産etc...の全てを引き継ぐ為の、
大切なお世継ぎ。
しかし次男は、長男+長男の子供が亡くなった(病気で死ぬ率が高いから)時の為の
スペアでしかない。。。

漱石の生い立ちを重ね合わせてみると、
宗助に自分を投影していたのかな...と思わせる、
実に、いとをかし、、、な作品なのであります。

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宗助が参禅しに行った
お寺のモデルとなった鎌倉「長谷寺」。
いとをかしな、お寺でした。

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